
お疲れさまです。
前回は、現場が忙しいのに前へ進まない原因の一つとして、
「何を先に終わらせるのか」という優先順位を整理しました。
その後、朝礼で最優先作業を伝えてみて、現場の動きに何か変化はありましたか?

何を先に終わらせるのかは、以前より伝わりやすくなったと思います。
職人も、先に幹線配線を進めようとしてくれました。
ただ、実際に作業を始めると、材料の使い方や施工方法について何度も確認されます。
そのたびに自分の仕事が止まり、結局、現場から離れられませんでした。

最優先作業は伝わったものの、作業の途中で判断が止まってしまったということですね。

そうです。
確認してくれること自体は助かります。
ただ、細かいことまで一つひとつ聞かれると、自分の仕事に集中できず、現場からも離れられません。

では、「それくらいは自分で判断してほしい」と伝えたことはありますか?

あります。
ただ、自分で判断してほしいと伝えると、今度は確認せずに進めてしまい、あとから手直しになることがあります。
何でも確認されるのも困りますが、勝手に進められるのも困ります。

なるほど。
今日の最優先作業を決めても、判断に迷うたびに職人の手が止まれば、現場は前へ進みません。
反対に、確認せずに進めて手直しが発生しても、予定していた工程は遅れます。
今回の目的は、確認をなくすことではありません。
どこまで職人が自分で判断し、どのような場合に監督へ確認するのかをそろえることです。
第2回 確認のズレを整理する

現場では、確認を丁寧に行うほど、間違いなく仕事を進めているように見えます。
しかし、実際には、
- 材料を使うたびに監督へ確認する
- 施工方法を一つずつ聞く
- 少し判断に迷うたびに作業を止める
- 監督を探して現場を歩き回る
- 返事が来るまで作業を止めて待つ
- 同じような内容を何度も確認する
といったことに時間を使っている場合があります。
どれも、確認する必要がまったくないという話ではありません。
むしろ、本人は、
「間違えて手直しになりたくない」
「監督の考えと違ったら困る」
「勝手に進めて怒られたくない」
と考えて、確認しています。
だからこそ、問題が見えにくくなります。
職人は、間違えないように確認している。
監督も、その都度きちんと判断を返している。
その都度、職人の作業も監督の仕事も止まり、現場が前へ進まない。
このようなときは、確認回数を減らす前に、何を自分で判断し、何を監督へ確認するのかという境目を確認する必要があります。

それでは、現場を例にして確認してみましょう。
職人から、何について確認されましたか?

3階の幹線配管についてです。
配管を梁の下へ通すのか、横へ逃がすのかを聞かれました。
その後も、支持材の種類や支持間隔、ほかの配管との離隔について何度も確認されました。

その中に、職人が自分で判断してもよかったことはありましたか?

支持材の種類や支持間隔は、施工要領を見れば分かります。
通常どおり施工できる部分は、本人が判断してよかったと思います。

では反対に、必ず確認してほしいことはありましたか?

梁を避けるために、配管ルートを大きく変更する場合です。
ほかの設備や天井高さにも影響するので、そこは勝手に進めてほしくありません。

そうすると、今回見直したいのは
「確認が多かったこと」だけではありません。
職人が自分で判断する内容と、監督へ確認する内容が分かれていなかったことを整理する必要があります。

確かに、自分の中では分けていますが、職人には具体的に伝えていませんでした。
「何回確認したか」より「何を確認したか」を見る
現場で確認のズレを整理するとき、確認された回数だけを見てしまうと
「また聞いてきた」
「それくらい自分で考えてほしい」
と、イライラしやすくなります。
しかも、確認回数だけを見ても、なぜ作業が止まったのかは分かりません。
大切なのは、
どのような内容で、職人の判断が止まっていたのかを見ることです。
今回の例を整理すると、次のようになります。
| 自分で判断できたこと | 監督へ確認するべきこと | 結果 |
| 施工要領で決まっている支持材や指示間隔 | 配管ルートの大きな変更 | 細かな確認で監督の仕事が何度も止まった |
| 図面通りに施工できる部分 | 他の設備や職種に影響する変更 | 判断待ちで職人の作業も止まった |
| 決められた範囲内での細かな納まり | 天井高さや点検口に影響する変更 | 予定していた作業が遅れた |
ここまで整理すると、問題は
「職人が何でも監督に聞いてきた」ということだけではありません。
本当の問題は
自分で判断してよいことと、確認してから進めることの境目が共有されていなかったことです。
つまり今回起きていたのは、確認回数だけの問題ではなく
どこまで自分で決めてよいのかという「確認のズレ」だと分かります。
本人は、なぜ何度も確認したのか
ここで、すぐに
「それくらい自分で考えろ」
「いちいち聞きに来るな」
「前にも教えただろう」
と注意しても、確認は減らない可能性があります。
なぜなら、本人の中では、監督へ確認する理由があるからです。

その職人は、なぜ支持材や施工方法まで何度も確認したのでしょうか?

間違って手直しになるのが嫌だったようです。
前の現場で、自分で判断して進めたら、あとから違うと言われたことがあったようです。

そうすると、本人は何も考えていなかったのではなく
「また手直しになりたくない」
「監督の考えと違ったら困る」
「確認してから進めた方が安全だ」
と考えていたのかもしれません。

確かに、勝手に進めるより、確認した方がよいと思っていたのかもしれません。

そうですね。
本人は、現場を止めようとしていたのではなく、失敗を避けようとしていた可能性があります。
確認する理由は、人によって違う
同じ現場にいても、確認する理由は人によって違います。
例えば
| 品質を大切にする人 | 間違った施工を残したくない |
| 周りとの関係を大切にする人 | 迷惑をかけたり、怒られたりしたくない |
| 成果を大切にする人 | 失敗して評価を下げたくない |
| 納得して進めたい人 | 自分の中で理解してから進めたい |
| 慎重に考える人 | 必要な情報を集めてから判断したい |
| 安全を重視する人 | 問題が起きないことを確かめたい |
| 効率や可能性を重視する人 | 確認に時間をかけず、自分で進めたい |
| 自分で判断したい人 | 監督を待たず、自分で決めたい |
| 周囲との調和を大切にする人 | 問題になりそうな判断を避けたい |
どれが正しく、どれが間違っているという話ではありません。
それぞれに、現場で生かせる強みがあります。
ただし、本人が確認したいことと、監督が確認してほしいことが違えば
「そこまで聞かなくてもいい」
「そこは確認してほしかった」
というズレが起きます。
今回のズレの正体

今回、監督が職人に求めていたのは、
基本的な施工は自分で判断し、工程やほかの職種に影響する変更は確認することでした。
一方で職人は、
間違えないために、細かなことも監督へ確認した方がよいと考えていました。
どちらも、現場を良くするための考えです。
問題は、確認すること自体ではありません。
監督と職人の間で、
- 自分で判断してよい範囲
- 必ず確認する条件
- 確認するタイミング
- 迷ったときの基準
- 監督が不在の場合の対応
がそろっていなかったことです。
つまり今回の問題は、
職人の判断力が足りないことではなく、判断と確認の境目が共有されていなかったことだと考えられます。
今回目指す状態
今回の改善で目指すのは、職人からの確認をすべてなくすことではありません。
必要な確認まで減らしてしまえば、手直しや事故につながります。
目指すのは、
必要なことは早めに確認し、それ以外は職人が自分で判断して進められる状態です。
具体的には、職人が作業中に
「これは図面と施工要領の範囲内なので、自分で進める」
「これは配管ルートが変わり、ほかの設備に影響するので確認する」
「この部分は施工後に見えなくなるので、隠ぺい前に確認する」
と判断できる状態をつくります。
監督が一日中すべての判断を返さなくても、職人が基準に沿って動けることが理想です。
改善プロセス1
自分で判断してよい範囲を決める
最初に、自分で判断して進めてよい範囲を決めます。
例えば、
- 図面どおりに施工できる
- 施工要領や社内基準で決まっている
- 指定された材料の範囲内で選べる
- ほかの職種や設備に影響しない
- 工程や費用に影響しない
- その場で簡単に修正できる
といった場合です。
「それくらい自分で考えて」
と伝えるだけでは、何を自分で決めてよいのか分かりません。
どの条件なら、自分で判断してよいのかを具体的に伝えることが大切です。
改善プロセス2
必ず確認する条件を決める
次に、監督へ確認する条件を決めます。
例えば、
- 図面から施工方法を変更する
- ほかの設備や職種に影響する
- 工程が遅れる可能性がある
- 材料や工数が追加になる
- 安全や品質に不安がある
- 施工後に隠れて見えなくなる
- 一度進めると簡単に戻せない
- 元請けや施主の判断が必要になる
といった場合です。
このように条件を決めておけば、
「何でも確認する」
「何も確認しない」
という両極端な状態を防ぎやすくなります。
改善プロセス3
確認するタイミングを決める
確認する内容だけでなく、いつ確認するのかも決めます。
例えば、
作業を始める前
図面変更や、ほかの設備への影響がある場合
材料を加工する前
やり直しや追加費用が発生する場合
施工後に隠れる前
天井内や壁内へ隠れ、あとから確認できなくなる場合
予定どおり終わらないと分かった時点
次工程に影響する可能性がある場合
作業を進めた後で確認しても、元へ戻せなければ手直しになります。
確認は、問題が起きた後ではなく
まだ判断を変えられる時点で行うことが重要です。
改善プロセス4
確認するときの伝え方を決める
職人から
「どうすればよいですか?」
とだけ聞かれると、監督は最初から状況を確認しなければなりません。
これでは、確認のたびに監督の時間が取られます。
確認するときは、次の4つを伝えてもらいます。
- 今、何をしようとしているのか
- 何が問題になっているのか
- 自分はどうしたいと考えているのか
- 何を判断してほしいのか
例えば、次のように伝えてもらいます。

3階の配管を梁下へ通す予定ですが、空調配管と干渉しています。
右へ300ミリ逃がせば施工できます。
ただし、点検口に近くなります。
右へ逃がしてよいか、確認をお願いします。
この形であれば、監督は状況を理解しやすく、短い時間で判断できます。
改善プロセス5
迷ったときの基準を決める
現場で起きることを、すべて事前に決めることはできません。
そのため、迷ったときに使う共通の基準を決めます。
例えば、
安全・品質・工程・費用・ほかの職種に影響する場合は確認するという基準です。
これらに影響せず、図面や施工要領の範囲内であれば、自分で判断して進めてもらいます。
また、
5分考えても判断できない場合は確認するという時間の基準も使えます。
長い時間迷って作業が止まることを防ぎながら、何でもすぐ監督へ聞くことも減らせます。
改善プロセス6
一度確認したことを基準として残す
同じ内容を何度も確認される場合は、一度出した答えが現場の基準として残っていない可能性があります。
例えば、
- 図面に変更内容を書き込む
- 写真に印を付ける
- 朝礼ノートに記録する
- 現場の共有チャットへ残す
- 施工基準表へ追加する
といった形で残します。
監督の頭の中だけに答えがある状態では、別の職人からも同じ確認が入ります。
一度出した判断を
次から職人が自分で判断できる基準へ変えることが大切です。
現場での声かけ例
細かな確認が続く場合

この支持材を使ってよいですか?

図面と施工要領は確認しましたか?

はい。この支持材を使うように書いてあります。

図面と施工要領の範囲内であれば、自分で判断して進めて大丈夫です。
図面と違う施工になる場合や、ほかの設備へ影響する場合は確認してください。
確認せずに進めていた場合

配管ルートを変更した理由を教えてください。

梁に当たったので、右側へ逃がしました。
監督を呼ぶと作業が止まると思い、自分で判断しました。

作業を止めずに進めようとしたことは分かります。
ただ、今回は空調配管と点検口に影響するため、変更前に確認が必要でした。
次から、ほかの設備や職種に影響する変更は、作業を進める前に声をかけてください。
判断を職人へ返す場合

この配管は、どちらから回せばよいですか?

図面と施工要領を確認したうえで、あなたはどちらがよいと考えていますか?

左から回した方が距離は短くなります。
ただ、ほかの配管との離隔が少なくなります。

安全、施工性、ほかの設備への影響を考えると、どちらがよいと思いますか?

少し長くなりますが、右から回した方がよいと思います。

分かりました。その判断で進めてください。
注意するときは、確認した理由を否定しない
確認が多いときに
「いちいち聞くな」
「それくらい自分で考えろ」
「前にも説明しただろう」
と伝えると、本人は確認すること自体を否定されたと受け取る可能性があります。
特に、品質や安全を守ろうとして確認している人に対して
「勝手に進めてよい」
とだけ伝えると、不安を抱えたまま作業することになります。
大切なのは
「手直しを避けるために確認したことは分かる」
「安全を気にしてくれたことは助かる」
と認めたうえで
「この範囲は自分で判断してよい」
「この条件に当てはまる場合は確認する」
と境目を示すことです。
大切なのは、確認そのものを減らすことではありません。
自分で判断することと、監督へ確認することを分けることが改善につながります。
おススメのKPI

今回のKPI
今回確認するKPIは
「確認待ち時間」です。
確認待ち時間とは、職人が監督の判断を待つことで、作業を進められなかった時間です。
例えば
- 監督を探していた時間
- 監督が現場へ来るまで待っていた時間
- 電話や返事を待っていた時間
- 判断が出るまで作業を止めていた時間
を記録します。
例えば、3人の職人が、それぞれ1日に20分ずつ確認を待っていた場合は、
3人×20分=60分
となります。
現場全体で、1日1時間の作業が止まっていたことが分かります。
大切なのは、確認回数を無理に減らすことではありません。
確認待ち時間が長い場合は
- 自分で判断してよい範囲を伝えていたか
- 必ず確認する条件を決めていたか
- どの時点で確認するのかを共有していたか
- 監督が不在のときの対応を決めていたか
- 一度出した判断を、現場の基準として残していたか
を振り返ります。
このKPIは、人を評価するためのものではありません。

確認によって現場が止まっている場面を見つけ、職人が自分で判断する範囲と、監督へ確認する範囲をそろえるために使います。
今回のまとめ
優先する作業を決めても、判断に迷うたびに職人の手が止まれば、現場は前へ進みません。
反対に、確認せずに進めて手直しが発生しても、予定していた工程は遅れます。
今回確認するのは
どこまで自分で判断し、どの時点で監督へ確認するのかという基準です。
今回のポイントは、次のとおりです。
- 確認回数だけでなく、何を確認したのかを見る
- 本人が確認した理由を聞く
- 自分で判断してよい範囲を決める
- 必ず確認する条件を決める
- 確認するタイミングを決める
- 確認するときは、自分の考えも伝えてもらう
- 迷ったときの共通基準をつくる
- 一度確認したことを現場の基準として残す
- 確認待ち時間を数字で確認する
確認のズレは
「職人が自分で考えていないから」
起きるとは限りません。
むしろ、
「間違えたくない」
「手直しを出したくない」
「現場を止めたくない」
と考えているからこそ起きる場合があります。
監督の役割は、すべての判断を代わりに行うことではありません。
どこまで職人に判断を任せるのか。
どのような場合に確認してもらうのか。
その境目を、職人とそろえることです。
次回は、5つのズレの3つ目である「完成基準のズレ」を取り上げます。
優先順位と確認の基準をそろえても
「本人は終わったと思っていた」
「監督が確認すると、まだ手直しが必要だった」
ということがあります。
次回は、
どこまでできれば、その作業を完了とするのか
を整理していきます。
⛑️保安全に⛑️