なぜ、急ぎの作業より“気になる細部”を直してしまうのか?

 

今回の相談者は、電気工事の監督です。

相談内容

監督
監督

 急ぎで終わらせてほしい仕事があるのに、部下は今やらなくてもよい細かい作業を先にしています。

 こちらからすると、

そこ、今やるところじゃないだろう

と思ってしまいます。

 本人はサボっているわけではありません。

 むしろ、本人なりに考えて、真面目に動いているように見えます。

 だからなのか、注意してもなかなか改善しません。

 このような部下には、どのように伝えれば、今やるべきことを優先して動いてもらえるのでしょうか?


まさや
まさや

 電気工事士の「まさや」です。

 私は、電気工事の現場で25年以上働き、見習い、職長、現場代理人、請負、小規模な経営まで経験してきました。

 その中で感じたのは、技術があっても、判断基準がそろっていなければ現場はうまく回らないということです。

 私は、現場で起きるズレを、

  • 優先順位
  • 確認
  • 完成基準
  • 教え方
  • 任せ方

 
 この5つに分けて整理し、部下や職人が迷わず動ける基準づくりを目指しています。

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第1回目のゴール

「そこ、今やるところじゃないだろ」が起きた場面を具体化する

 

 

まさや
まさや

 お疲れ様です。

 毎日の現場対応、本当に大変だと思います。

 作業を進めながら、職人への指示や確認、工程の調整まで行うのは、決して簡単なことではありません。

 今回のミーティングでは、現場で起きていることを一度に全部解決しようとはせず、テーマを分けて整理していきます。

 全部で5回に分けて、1回ごとに一つの課題を取り上げ、現場で使える形にしていきたいと思います。

第1回 優先順位
第2回 確認
第3回 完成基準
第4回 教え方
第5回 任せ方

 毎回、現場で実際に起きていることを確認しながら、少しずつ進めていきます。

 無理に良い答えを出そうとせず、普段感じていることをそのまま話してもらえれば大丈夫です。

監督
監督

 配線を終わらせてほしかったのに、器具の通りを直していました・・・

まさや
まさや

 配線を終わらせてほしかったんですね!

 いつまでに、終わらせたかったですか?

監督
監督

 午前中に終わらせたかったです!

今回の相談は
「現場では、急ぎで終わらせたい作業があるのに、部下が先に細かい納まりや見た目の微調整をしてしまう」 でした。

タイプ表に出る行動囚われ守ろうとしていること5分類改善ポイント
タイプ1細かい納まりを直す正しくありたい品質・正しさ完成基準合格ラインを決める
タイプ2困っている人を手伝う人の役に立ちたい関係・感謝優先順位手伝う順番を決める
タイプ3成果が見える作業を進める成果を出したい評価・結果確認途中確認を入れる
タイプ4違和感を直す自分らしくありたい納得感・意味完成基準こだわる範囲を決める
タイプ5情報を集めてから動く理解していたい知識・準備確認必要情報を決める
タイプ6何度も確認してから動く安全でいたい安心・信頼確認確認回数と確認先を決める
タイプ7面白そうな作業に動く楽しくありたい可能性・自由優先順位今日の最優先を一つにする
タイプ8自分の判断で進める強くありたい主導権・仲間任せ方権限範囲を決める
タイプ9周りに合わせて後回し平和でありたい調和・空気優先順位先にやる作業を明確にする

これを、具体的にすると

職長側は

「まず急ぎの作業を終わらせてほしい」
「次工程に渡すことを優先してほしい」
「今日中に完了させることを優先してほしい」

部下側は

「気になるところを直してから進めたい」
「中途半端なまま次に行きたくない」
「後で手直しになるくらいなら、今直した方がいい」

と考えている。

どちらも間違いではありません。

ただ、現場では
品質・工程・安全・人の動き・元請け対応・次工程・今日の期限など

全体を見ながら判断する必要があり、優先して進めてほしい作業があります。

そこで、今回のズレは「優先順位のズレ」として考えていきます。

ステップ1:
相手が大切に思っていることを確認する

職長
職長

昨日、午前中に配線を終わらせてほしかったんだけど、途中で器具の位置を直していましたね。

部下
部下

はい。少し通りが悪かったので、気になりました。

職長
職長

そのまま進めると、何が一番気になりますか?

部下
部下

雑に見られるのが嫌です。
あとで見た時に、ちゃんとしていないと思われると思って。

職長
職長

雑な仕事を残したくなかったんだね。

部下
部下

はい。後で手直しになるのも避けたかったです。

職長
職長

なるほど。
気づいた時に直した方がいいと思ったのは、品質を守りたかったから

部下
部下

そうです。中途半端なまま進めたくなかったです

職長
職長

分かった。
今回の判断は、早く終わらせたくなかったんじゃなくて、ちゃんと仕上げたい気持ちが強かったということだね。

部下
部下

はい。そうです。

この会話で見えてくるのは
「部下は急ぎの作業を軽く見ていたわけではない」ということです。

部下が大切にしていたのは

  • ちゃんと仕上げること 
  • 雑な仕事を残さないこと
  • 品質を守ること

このように、「正しく進めたい」「中途半端にしたくない」という思いが強い場合 → タイプ1の傾向が出ている可能性があります。

タイプ1の取扱い説明書 


目標を決める

今回の目標は

部下が「急ぎの作業」と「細部の修正」を分けて判断できるようにすること。

つまり、

先に完了させるべき作業なのか。
確認してから判断すべきことなのか。
今すぐ直すべき細部なのか。
後で直してもよい細部なのか。

これを、部下が現場で判断できることを目指します。

目指すのは、次の3つです。

  • 1つ目は、今日の最優先を知っていること
  • 2つ目は、後でよい修正を知っていること
  • 3つ目は、確認する基準を知っていること

その結果

部下の判断目指すこと
気になるから直してしまう今は完了優先
雑に見せたくないから直すこれは後で直せばよい
後で困りそうだから直すこれは確認が必要

と判断しやすくなります。


改善プロセス(何をするか?)

改善は、なんとなく「できた」では結果が見えません。

「前より良くなった気がする」
「少し伝わった気がする」
「たぶん分かってくれたと思う」

こうした感覚だけでは、本当に現場が変わっているのか判断しにくいです。

改善を見る時は数字で確認することをおススメします。

そこで、我々は2つの「KPI」を用意します。

KPIとは?

結果KPI現場が良くなったかを見る数字
プロセスKPI良くなる行動ができているかを見る数字

この2つのアイテムを使って、改善を見ていきます。

 


今回のご提案は

結果KPI急ぎの作業が予定通り終わった回数
プロセスKPI朝礼で「今日の最優先」と「後でよい修正」を共有した回数

結果KPIは、現場が良くなったかを見る数字です。

今回で言えば

  • 急ぎの作業が予定通り終わったか
  • 次工程に予定通り渡せたか
  • 職長が「そこ今じゃない」と感じる場面が減ったか

ここを見ていきます。

一方で、プロセスKPIは、良くなる行動ができているかを見る数字です。

今回で言えば

  • 朝礼で今日の最優先を伝えたか
  • 細かい修正を今やるものと後でよいものに分けたか
  • 迷った時の確認基準を伝えたか

ここを見ていきます。

つまり、今回の改善では、

結果KPI
 急ぎの作業が予定通り終わったか

プロセスKPI
 優先順位をそろえる行動をしたか

この2つで見ていきます。


現場でのやり方

やることは、難しくありません。

朝礼や作業前の打ち合わせで、次の3つを伝えます。

 

1. 今日の最優先を伝える

まずは、今日一番優先してほしい作業をはっきり伝えます。

たとえば、

「今日は午前中に配線完了が最優先」
「今日は見た目の微調整より、次工程へ渡すことを優先」
「今日は完璧な納まりより、まず通電確認まで持っていく」

このように伝えます。

ここで大事なのは、ただ「急いで」と言わないことです。

「何を優先するのか」
「何時までにどこまで進めるのか」
「今日は何を後回しにしてよいのか」

ここまで伝えると、部下は判断しやすくなります。

 

2. 後でよい修正を決める

次に、今すぐ直さなくてよいものを決めます。

たとえば、

「見た目の微調整は、配線が終わってからまとめて見る」
「器具の通りが少し気になる程度なら、まず作業を進める」
「仕上げの調整は、午後3時にまとめてやる」

このように、後でよい修正を先に決めておきます。

タイプ1の傾向がある人は、気になるところを見つける力があります。

ただ、その力が強く出ると、今やるべき作業より、目の前の気になる部分を直すことが優先される場合があります。

だから、気づくことを否定するのではなく、

「気づいたことはメモしておく」
「今直すか、後で直すかを分ける」
「工程に影響するものだけ先に相談する」

という形に変えていくことが大切です。

 

3. 確認する基準を決める

最後に、迷った時の確認基準を決めます。

たとえば、

「次工程に影響するなら確認」
「安全に関わるならすぐ確認」
「やり直しが大きくなりそうなら確認」
「見た目だけの微調整なら、まずメモして後で確認」

このようにしておくと、本人も動きやすくなります。 
 


声かけ例

実際の現場では、次のように伝えると使いやすいです。

 

朝礼での声かけ

職長
職長

今日は午前中に配線を終わらせることを最優先にします。器具の通りや細かい納まりで気になるところがあっても、工程に影響しないものは一度メモして、配線が終わってからまとめて見よう。

 

作業中に気になる細部を直していた時

職長
職長

そこに気づいたのは良いと思う。
ただ、今日は午前中の配線完了が最優先だから、今すぐ直すものか、後で直すものかを分けよう。

 

タイプ1の品質意識を否定しない言い方

職長
職長

雑にしたいわけじゃない。品質も大事。
ただ、今日は先に次工程へ渡すことが優先だから、細かい調整は後でまとめて見よう。

 

確認基準を伝える言い方

職長
職長

安全や手戻りに関わるならすぐ相談して。
見た目の微調整だけなら、まずメモして作業を進めてほしい。

 

振り返りでの声かけ

職長
職長

今日の判断で良かったのは、気になるところに気づけたこと。
ただ、次は今直すものと後でよいものを分けられると、もっと現場が回りやすくなると思うよ。

 


改善の見方

改善を見る時は、感覚だけで判断しないことが大切です。

「前より良くなった気がする」
「まだ少しズレている気がする」

だけでは、現場が本当に変わっているのか分かりにくいからです。

そこで、1週間ごとに次の2つを確認します。

結果KPI

急ぎの作業が予定通り終わった回数

これは、現場の結果を見る数字です。

急ぎで終わらせたい作業が、予定通り終わったか。
次工程に遅れず渡せたか。
細部の修正によって、作業が遅れていないか。

ここを確認します。

プロセスKPI

朝礼で「今日の最優先」と「後でよい修正」を共有した回数

これは、職長側の行動を見る数字です。

今日、何を最優先にするのか。
どの修正は後でよいのか。
どこで確認してほしいのか。

これを朝礼で伝えた回数を見ます。

この2つを見ることで、

伝え方を変えたことで、現場が動きやすくなったか。
優先順位のズレが減ったか。
本人が判断しやすくなったか。

が見えやすくなります。

最初から完璧に変える必要はありません。

まずは、

今日の最優先を伝える。
後でよい修正を決める。
迷った時の確認基準を決める。

この3つを繰り返すことです。

細かいところに気づく力を否定するのではなく、
今やることと、後でよいことを分ける。

この基準がそろうことで、品質を守りながら、急ぎの作業も進めやすくなります。

 

まとめ

急ぎの作業より、気になる細部を先に直してしまう。

この場面を見ると、職長はつい、

「そこ、今やるところじゃない」
「先に終わらせてほしかった」
「細かいところは後でいい」

と感じます。

しかし、本人はサボっているわけでも、急ぎの作業を軽く見ているわけでもありません。

多くの場合、

ちゃんと仕上げたい。
雑な仕事を残したくない。
品質を守りたい。

という思いから動いています。

だから、必要なのは否定ではありません。

必要なのは、

今やるべきことをそろえること
後でよい修正を決めること
迷った時の確認基準を決めること

そのために、今回のKPIは次の2つです。

結果KPI|急ぎの作業が予定通り終わった回数
プロセスKPI|朝礼で「今日の最優先」と「後でよい修正」を共有した回数

現場は、気合いだけでは変わりません。

「ちゃんとやれ」
「考えて動け」
「急げ」

だけでは、人によって解釈が変わります。

だからこそ、職長が先に基準をそろえる。

今日、何を優先するのか。
何は後でよいのか。
どこで確認するのか。

ここがそろうと、部下や職人は動きやすくなります。

そして、職長が毎回判断を抱えなくても、現場が少しずつ回りやすくなっていきます。


⛑️保安全に⛑️