なぜ、任せても現場が回らないのか

社長が判断を抱え込んでしまう現場の共通点

現場では、こんなことはありませんか。

「任せたはずなのに、結局こちらに確認が戻ってくる」
「職長に任せたいのに、最後は社長が判断している」
「若手がいつまでも指示待ちになっている」
「同じことを何度も説明している」
「人によって仕上がりが違う」
「確認が多すぎる人もいれば、確認せずに進めて手戻りになる人もいる」

社長や職長から見ると、

「何回言えば分かるんだ」
「なぜ自分で判断できないんだ」
「そこは言わなくても分かるだろう」
「任せたのに、なぜ思った通りに進まないんだ」

と感じることがあります。

しかし、こうした問題は、本人のやる気や能力とみてしまうと、改善が難しいです。

多くの場合、現場の中で判断基準がそろっていないことから起きています。

 

現場が回らない原因は、能力不足だけではない

現場で問題が起きると、つい人に原因を求めたくなります。

「あいつは考えていない」
「まだ分かっていない」
「責任感が足りない」
「何度言っても同じことをする」

もちろん、技術や経験の差はあります。
知識不足や確認不足が原因になることもあります。

しかし、それだけで片付けてしまうと、同じ問題がまた起きます。

なぜなら、現場で起きているズレの多くは、
人の能力不足ではなく、基準のズレから起きているからです。

たとえば、社長の中では、

「今日はこの作業を最優先で終わらせてほしい」
「この部分は80点でいいから、先に全体を進めてほしい」
「ここまでは自分で判断していい」
「ここから先は確認してほしい」

という判断があるかもしれません。

でも、それが職長や若手に伝わっていなければ、現場では別の判断が起きます。

本人は本人なりに考えて動いている。
でも、社長や職長が求めている判断とはズレている。

これが、任せたのに現場が回らない大きな原因です。

 

「伝えたはず」でも、基準までは伝わっていない

現場では、「伝えたはずなのに伝わっていない」ということがよく起きます。

しかし、よく見ると、作業内容は伝えていても、判断基準までは伝えていないことがあります。

たとえば、

「これ、今日中にやっておいて」 

と伝えたとします。

この一言だけでは、人によって受け取り方が変わります。

ある人は、品質を重視して丁寧に進めます。
ある人は、早く終わらせることを優先します。
ある人は、分からないところを何度も確認します。
ある人は、迷っても確認せずに進めます。
ある人は、他の人に頼まれた作業を先に手伝います。

同じ指示を出しても、人によって動き方が変わるのは、それぞれが違う基準で判断しているからです。

つまり、現場で必要なのは、作業内容を伝えることだけではありません。

「何を優先するのか」
「どこで確認するのか」
「どこまでできれば完成なのか」
「どう教えるのか」
「どこまで任せるのか」

この基準をそろえることが必要です。

 

現場で起きる5つのズレ

任せても現場が回らないとき、問題は大きく5つに分けて考えることができます。

それが、

  1. 優先順位のズレ
  2. 確認のズレ
  3. 完成基準のズレ
  4. 教え方のズレ
  5. 任せ方のズレ

です。

この5つを整理すると、現場で何が起きているのかが見えやすくなります。

 

1. 優先順位のズレ

優先順位のズレとは、
何を先にやるかの基準がそろっていない状態です。

現場では、こんな場面があります。

「そこ、今やるところじゃないだろう」
「先にこっちを終わらせてほしかった」
「細かいところは後でいいのに」
「急ぎの作業より、気になる部分を直している」
「困っている人を助けて、肝心な作業が遅れている」

本人は手を抜いているわけではありません。
むしろ、一生懸命に動いていることも多いです。

ただ、本人が大事だと思っていることと、現場全体で今優先すべきことがズレている。

これが、優先順位のズレです。

改善するには、朝礼や作業前に

「今日の最優先は何か」
「今日中に必ず終わらせる作業は何か」
「後回しでよい作業は何か」
「迷ったら何を優先するのか」

を共有する必要があります。

 

2. 確認のズレ

確認のズレとは、
どこまで自分で判断し、どこで確認するかの基準がそろっていない状態です。

現場では、両方の問題が起きます。

何度も確認してくる人がいる。
逆に、確認せずに進めて手戻りになる人もいる。

社長や職長から見ると

「そのくらい自分で判断してほしい」
「そこは勝手に進めないでほしかった」

という不満になります。

でも、本人からすると

「どこまで自分で決めていいのか分からない」
「確認しないと怒られるかもしれない」
「これくらいは自分で進めていいと思った」

という判断になっていることがあります。

つまり、問題は確認が多いことだけではありません。
確認する基準がそろっていないことです。

改善するには

「ここまでは自分で判断していい」
「ここから先は確認してほしい」
「迷ったら5分考えて確認する」
「変更・追加・判断に迷う時は止めて確認する」

という確認ルールを決めることが大切です。

 

3. 完成基準のズレ

完成基準のズレとは、
どこまでできれば完了なのかの基準がそろっていない状態です。

現場では、こんなことが起きます。

「終わったと言われたけど、確認したら直しが多い」
「人によって仕上がりが違う」
「片付けまで終わっていない」
「報告がなく、終わったのか分からない」
「きれいに仕上げているが、時間がかかりすぎている」

これは、本人がサボっているとは限りません。

本人の中では「終わった」と思っている。
でも、社長や職長が求める完成状態とは違っている。

このズレがあると、手戻りが増えます。
確認も増えます。
結局、任せた側がもう一度見直すことになります。

改善するには

「どこまでできれば合格か」
「仕上がりはどの程度まで求めるか」
「写真・報告・片付けまで含めて完了なのか」
「今回の作業は100点を目指すのか、まず終わらせることを優先するのか」

を事前にそろえる必要があります。

 

4. 教え方のズレ

教え方のズレとは、
何を、どの順番で、どこまで教えるかの基準がそろっていない状態です。

現場では

「前にも教えたのに、また聞いてくる」
「見て覚えろと言っても伝わらない」
「教える人によって言うことが違う」
「若手が何を基準に判断すればいいか分かっていない」

ということが起きます。

教えた側は、作業のやり方を伝えたつもりでも、
教わる側は、判断の理由まで分かっていないことがあります。

たとえば

「こうやっておいて」

だけでは、作業の形は分かっても、
なぜその順番なのか、どこを見て判断するのかまでは分かりません。

そのため、次に少し違う状況になると、また判断できなくなります。

改善するには

「作業手順」だけでなく
「なぜその順番なのか」
「どこを見て判断するのか」
「どこで失敗しやすいのか」
「どこまでできれば合格なのか」

まで伝えることが大切です。

 

5. 任せ方のズレ

任せ方のズレとは、
どこまで任せるのか、どこから相談してほしいのかの基準がそろっていない状態です。

現場では

「任せたのに、結局何度も聞いてくる」
「任せたつもりだったのに、勝手に進められた」
「職長に任せたいのに、判断が社長に戻ってくる」
「若手に任せたいが、失敗が怖くて任せきれない」

ということが起きます。

任せる側は「任せた」と思っている。
任された側は「どこまで任されたのか」が分かっていない。

この状態では、現場は自走しません。

改善するには

「この範囲は自分で決めていい」
「金額・工程・仕様に関わることは確認する」
「迷った時はここで相談する」
「失敗してもよい範囲はここまで」
「最後の報告はこの形で行う」

という任せ方の基準を決める必要があります。

 

なぜ、社長が判断を抱え込んでしまうのか

社長が判断を抱え込んでしまう現場には、共通点があります。

それは、社長の頭の中には基準があるのに、その基準が現場に共有されていないことです。

社長は長年の経験から、瞬時に判断できます。

「今はこっちが先」
「ここは確認が必要」
「これはこの程度でいい」
「この人にはここまで任せていい」
「この作業は後で手戻りになる」

こうした判断が自然にできます。

しかし、その判断基準が職長や若手に見えていなければ、現場は同じように動けません。

その結果、社長に確認が集中します。
職長が判断しきれません。
若手は指示待ちになります。
社長がいないと現場が止まります。

つまり、社長が忙しい原因は、仕事量だけではありません。

社長の中にある判断基準が、現場に移っていないことも大きな原因です。

 

感覚ではなく、KPIで現場を見る

現場改善で大切なのは、感覚だけで判断しないことです。

「最近、確認が多い気がする」
「手戻りが多い気がする」
「若手が育っていない気がする」
「任せられていない気がする」

このような感覚は、とても大事です。

しかし、感覚だけでは、どこを改善すればよいかが見えにくくなります。

そこで必要になるのが、KPIです。

KPIとは、現場の状態や改善の進み具合を見るための数字です。

ただし、数字を増やせばよいわけではありません。
大切なのは、現場のズレを見える化するために、必要な数字を見ることです。

 

成果KPIとプロセスKPIに分けて考える

現場改善では、KPIを2つに分けて考えると分かりやすくなります。

それが、

成果KPIプロセスKPIです。

成果KPIは、
現場が良くなったかを見る数字です。

プロセスKPIは、
その成果につながる行動ができているかを見る数字です。

 

成果KPIとは

成果KPIは、改善の結果を見る数字です。

たとえば、

「社長への確認回数が減ったか」
「手戻り件数が減ったか」
「判断待ち時間が減ったか」
「同じミスの再発が減ったか」
「職長が判断できる件数が増えたか」
「若手が基準に沿って判断できる場面が増えたか」

を見るものです。

これは、社長が本当に知りたい数字です。

なぜなら、現場が任せられる状態に近づいているかを確認できるからです。

 

プロセスKPIとは

プロセスKPIは、成果を出すための行動を見る数字です。

たとえば、

「朝礼で今日の最優先を共有した回数」
「作業前に完成基準を確認した回数」
「判断範囲を伝えた回数」
「相談ラインを決めた回数」
「作業後に振り返りをした回数」
「若手に判断させた回数」

などです。

成果だけを見ても、現場は変わりません。

確認回数を減らしたいなら、確認ルールを決める必要があります。
手戻りを減らしたいなら、完成基準をそろえる必要があります。
判断待ちを減らしたいなら、任せる範囲を明確にする必要があります。

つまり、成果KPIを変えるには、プロセスKPIを変える必要があります。

 

たとえば「確認回数が多い現場」の場合

社長への確認回数が多い現場があるとします。

このとき、いきなり

「もっと自分で考えろ」
「確認を減らせ」

と言っても、あまり改善しません。

なぜなら、本人はどこまで自分で判断してよいか分かっていない可能性があるからです。

この場合、成果KPIは、

社長への確認回数

になります。

そして、プロセスKPIは、

判断範囲を伝えた回数
相談ラインを決めた回数
朝礼で確認ルールを共有した回数

などになります。

このように、結果だけを見るのではなく、結果につながる行動まで見ることで、改善しやすくなります。

 

たとえば「手戻りが多い現場」の場合

手戻りが多い現場では、完成基準がそろっていないことがあります。

本人は終わったつもりでも、職長から見ると足りない。
職長は任せたつもりでも、若手はどこまでやればよいか分かっていない。

この場合、成果KPIは、

手戻り件数

です。

そして、プロセスKPIは、

作業前に完成基準を確認した回数
写真・報告・片付けまで含めて完了条件を伝えた回数
作業後に振り返りをした回数

などになります。

手戻りを減らすには、「ちゃんとやれ」と言うだけでは足りません。

どこまでできれば完成なのかを、現場で分かる形にする必要があります。

 

任せても回る現場に必要なこと

任せても回る現場をつくるために必要なのは、社長がすべてを判断することではありません。

社長の頭の中にある判断基準を、職長や若手にも分かる形にすることです。

「何を優先するのか」
「どこで確認するのか」
「どこまでできれば完成なのか」
「どう教えるのか」
「どこまで任せるのか」

この5つの基準がそろうと、現場は少しずつ変わります。

社長への確認が減る。
職長が判断しやすくなる。
若手が動きやすくなる。
手戻りが減る。
同じ説明を繰り返す回数が減る。
現場が止まりにくくなる。

つまり、任せても回る現場は、気合いや根性だけでつくるものではありません。

基準をそろえ、数字で見える化し、現場で使える形に整えることでつくっていくものです。

 

まとめ

現場で起きる問題は、能力不足だけが原因ではありません。

「伝えたのに伝わらない」
「任せたのにズレる」
「何度も確認が入る」
「人によって仕上がりが違う」
「社長に判断が集中する」

こうした問題の多くは、現場の基準がそろっていないことから起きています。

大切なのは、現場の問題を人のせいで終わらせることではありません。

この5つの基準に分けて整理し、成果KPIとプロセスKPIで見える化することです。

社長が判断を抱え込まず、職長と若手が基準に沿って動ける現場をつくる。

その第一歩は、現場で何がズレているのかを見える化することから始まります。

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