「強さ」が現場を凍らせるとき

― ある工程会議の出来事 ―

工程が押していた。
資材も遅れている。天候も読めない。

若い職長が口を開く。
「一度ここで止めて、再調整した方がいいかもしれません」

その瞬間、社長が言う。
「止めるな。やり切れ。」

声は強い。迷いがない。
誰よりも責任を背負う覚悟の声だ。

空気が張り詰める。

若い職長は「わかりました」と答える。
本当は、もう一案あった。
だが、言わなかった。

現場は動く。
しかし――
誰も次の意見を出さない。


■ なぜ硬直するのか

若い職長の中のスイッチが

・反論は対立になる
・覚悟に水を差してはいけない
・最後は社長が決める

こうして、
「考えるスイッチ」は「従うスイッチ」に切り替わる。

一方、社長の頭の中には

・俺が守らなければ
・弱さを見せれば崩れる
・中途半端が一番危険

社長は支配したいのではない。
守りたいだけだ。

社員を。現場を。会社を。


■ 本当の原因

止めているのは“強さ”ではありません。

先に結論を出してしまう構造です。

タイプ8の決断は速い。
責任も引き受ける。

だが、

結論が早いほど、プロセスは短くなる。

プロセスが短いほど
他者の思考は入る余地がなくなる。

これが、静かに自律を止める構造。


■ ここでひとつの視点

もしあなたが、

・曖昧が嫌い
・最後は自分が背負うと思っている
・弱さを見せると組織が緩む気がする

こうした傾向があるなら、

それは エニアグラム でいう「タイプ8」の可能性があります。

タイプ8は、
「強さ」「決断」「保護」を大切にするタイプです。

組織を前に進める力がある。
危機を突破する力がある。

だからこそ――

強さが常に前面に出ると、
周囲は“守られる側”で止まってしまう。


■ 改善のポイント

タイプ8が現場を育てるために必要なのは、

結論を一拍遅らせること。

たとえば、

✕「止めるな。やり切れ。」
◯「他に案はあるか? 」

この一言で、現場は思考を取り戻す。

強さは武器になる。
だが、余白がなければ育たない。

決断の前に、対話を挟む。

それだけで、強さは“圧”から“支え”に変わる。


■ 経営者への問い

あなたは今、すべてを背負っていますか?
それとも、背負える人材を育てていますか?

タイプ8の力は、
現場を守る力にも、現場を依存させる力にもなる。

違いは、決断の前の3分です。

会議の一言が変わるだけで、
職長の覚悟は「従う覚悟」から「担う覚悟」に変わります。


経営と職人、その両方を知る立場から。
止まる構造を可視化し、
止まらない現場づくりを支えています。

 

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