「助けている」のに、現場が育たない

― ある夕方の出来事 ―

作業が押していた。

「そこ、俺がやっとくよ」
社長が工具を手に取る。

若い職人は少し安心した顔をする。
「ありがとうございます」

その日も、社長は最後まで現場に残った。
細かいところを直し、危なそうな作業を引き取り、段取りも整えた。

現場は回った。
問題も起きなかった。

それでも――
なぜか、疲れだけが残る。


■ なぜ育たないのか

若い職人の中ではこうなる。

・困ったら社長が助けてくれる
・最後は直してくれる
・無理しなくていい

感謝はある。
不満もない。

だが、成長のスイッチが入らない。

一方、社長の中にはこうある。

・負担をかけたくない
・事故を出したくない
・困っているなら助けたい

社長はただ、守りたいだけだ。
人を。現場を。会社を。


■ 本当の原因

止めているのは“優しさ”ではありません。

境界線の曖昧さです。

・どこまで任せるのか
・どこから支えるのか
・どこで見守るのか

それが言語化されないまま手を出すと、

現場は「自分がやらなくても、誰かがやってくれる」と思ってしまう。

これが、静かに育成を止める構造。


■ ここでひとつの視点

もしあなたが、

・頼まれると断れない
・人の役に立てないと落ち着かない
・「大丈夫?」が口癖

こうした傾向があるなら、

それは エニアグラムでいう「タイプ2」 の可能性があります。

タイプ2は、
「支援」「貢献」「人とのつながり」を大切にするタイプです。

場の安心感をつくる力がある。
人を支える力がある。

だからこそ――

助けすぎると、
相手の自立を奪ってしまうことがある。


■ 改善のポイント

タイプ2が現場を育てるために必要なのは、

手を出すことではなく、役割と境界線を明確にすること

たとえば、

✕「俺がやっとくよ」
◯「今回は任せる。最後だけ一緒に確認しよう」

この違いで、責任は残り、安心も残る。

優しさは武器になる。
だが、境界がなければ依存を生む。

境界が明確になったとき、それは“育成”に変わります。


■ 経営者への問い

あなたは今、助けていますか?
それとも、育てていますか?

タイプ2の力は、
現場を安心させる力にも、現場を依存させる力にもなる。

違いは、関わり方の設計だけです。

夕方の一言が変わるだけで、
若い職人の背中は伸びます。


経営と職人、その両方を知る立場から。
止まる構造を可視化し、
止まらない現場づくりを支えています。

 

⛑️保安全に⛑️