「正しい」のに、止まる現場

― ある朝の出来事 ―

作業前の朝礼が始まりました。

「今日は盤の結線を先に進めます」

若い職長がそう言った。
図面も確認している。段取りも悪くない。

そのとき社長が言う。
「違う。先にこっちだろ」

空気が止まった。

若い職長は「すみません」とだけ言い、手を止める。
周囲も動かない。

社長は間違っていない。
工程上、確かにその順番が正しい。

それでも、現場は止まってしまった。


■ なぜ止まるのか

若い職長の中のスイッチが

・また違った
・自分の判断はダメだ
・次からは確認してから動こう

こうして、考えるスイッチが「指示待ちのスイッチ」に切り替わってしまう。

一方、社長の頭の中には

・なぜ基本ができない
・守るべき基準がある
・甘さは事故につながる

社長はただ、守りたいだけだ。
品質を。信用を。会社を。


■ 本当の原因

止めているのは“正しさ”ではありません。

共有されていない「判断基準」が原因です。

社長の中には優先順位がある。

・今回はクレームを絶対出せない
・今日は安全第一
・この現場は信用回復が最優先

しかしそれが言語化されないまま、「違う」という結果だけが伝わると、現場は“自分で考えないほうが安全だ”と考えてしまう。

これが、静かに止まる構造。


■ ここでひとつの視点

もしあなたが、

・間違いを見るとすぐ気づく
・基準を守れない状態が我慢できない
・「ちゃんとやろう」が口癖

こうした傾向があるなら、

それは エニアグラムでいう「タイプ1 の可能性があります。

タイプ1は、
「正しさ」「改善」「責任」を強く大切にするタイプです。

現場を守る力がある。
基準を引き上げる力がある。

だからこそ――

正しさが強く出すぎると、
周囲は“評価される側”になりやすい。


■ 改善のポイント

タイプ1が現場を止めないために必要なのは、

現場に正解を渡すことではなく、判断軸を共有すること

たとえば、

✕「それ違う」
◯「今日は品質最優先だから、この順番にしたい」

たったこれだけで、現場の受け取り方は変わってきます。

正しさは武器になるが、傷つけてしまう可能性がある。
だが、理由が共有されたとき、それは“育成”に変わります。


■ 経営者への問い

あなたは今、正解を渡していますか?
それとも、判断軸を育てていますか?

タイプ1の力は、
現場を止める力にも、現場を自走させる力にもなる。

違いは、構造の理解だけです。

朝礼の一言が変わるだけで、
職長の目の色は変わります。


経営と職人、その両方を知る立場から。
止まる構造を可視化し、
止まらない現場づくりを支えています。

 

⛑️保安全に⛑️