――正しさが、現場を止めてしまった日の話――
ある現場で起きた、小さな違和感
その日は、特別に大きなトラブルがあったわけではありません。
工期も順調、メンバーも揃っている。
「今日は問題なく終わるだろう」
そう思っていた現場でした。
ただ一つ、気になることがありました。
若手作業員の配線のまとめ方です。
内線規程的には問題ない。
検査も通る。
しかし、自分のやり方とは違う。
「ここは、こうした方がきれいだろ」
「このやり方は、正直よくない」
気づけば、口出しが増えていました。
細かい部分、些細なズレ、考え方の違い。
一つ一つを、正していく。
現場は静かになりました。
ミスは減った。
でも、空気が重い。
このとき、私は気づいていませんでした。
自分が、タイプ1の「入ってはいけない領域」に足を踏み入れていたことに。
タイプ1の入ってはいけない領域とは何か
タイプ1の入ってはいけない領域。
それは、
「自分の正しさを、他人にまで適用し始める領域」
です。
タイプ1は、
- 正しいかどうか
- ルールに合っているか
- あるべき姿かどうか
を自然と判断しています。
これは意識してやっていることではありません。
無意識です。
問題は、その判断を「自分の中だけで終わらせられなくなった瞬間」に起こります。
- 正しいのだから、直すべきだ
- 間違っているのだから、言うのが当然だ
- 良くないのだから、指摘しなければならない
この思考に入ったとき、タイプ1は危険ゾーンに入っています。
正しさが、いつの間にか「裁き」になる
現場で起きていたのは、こんな状態でした。
私は「良くしよう」と思っていました。
でも、
相手から見ればどうでしょう。
- 何をしてもチェックされる
- やり方を変えるたびに指摘される
- 自分の考えを出す前に否定される
結果、若手は言いました。
「どうせ、正解は決まってるんですよね」
この一言で、はっとしました。
私は正しさを共有しているつもりで、裁いていたのです。
これが、タイプ1の入ってはいけない領域の正体です。
タイプ1本人は「悪いこと」をしている自覚がない
ここが、いちばん厄介なポイントです。
タイプ1は、
- サボっているわけではない
- 感情的になっているわけでもない
- むしろ責任感から行動している
だからこそ、
「なぜ人が離れるのか分からない」
という状態になります。
現場の質は上げたい。
ミスは防ぎたい。
いい仕事をしたい。
その気持ちが本物だからこそ、
入ってはいけない領域に気づきにくいのです。
入ってはいけない領域から抜けるための視点
タイプ1に必要なのは、「正しさを捨てること」ではありません。
必要なのは、使い分けです。
① 正しさは「基準」であって「武器」ではない
正しさは、判断材料です。
相手を従わせるための道具ではありません。
「これは間違いか?」ではなく、
「これは誰の基準か?」
と一度立ち止まることが大切です。
② 直す前に、「目的」を共有する
やり方を直す前に、
- なぜこのやり方が必要なのか
- 何を守りたいのか
- どこが一番大事なのか
目的を先に共有すると、正しさは押し付けになりにくくなります。
③ 「任せる=妥協」ではないと知る
タイプ1は、任せることを「基準を下げること」だと感じやすい傾向があります。
しかし実際は違います。
任せるとは、基準を信頼に置き換えることです。
正しさを手放したとき、現場は動き出す
ある日の現場で、私はこう言いました。
「検査に通るなら、一度そのやり方でやってみよう」
それだけで、空気が変わりました。
若手は考え、工夫し、相談してくるようになりました。
結果として、
仕上がりは悪くなりませんでした。
むしろ、現場は自走し始めたのです。
まとめ:タイプ1の成長は「正しさの外」にある
タイプ1の入ってはいけない領域は、
正しさを守ろうとするあまり、人を見なくなる場所です。
そこから一歩離れたとき、
- 正しさは活きる
- 人は育つ
- 現場は回り出す
タイプ1の本当の強さは、「正しいこと」ではなく、
正しさをどう扱うかにあります。
もし最近、「なんだか現場が重い」と感じているなら、
それは成長のサインかもしれません。
正しさの一歩外に、
次のステージがあります。
⛑️保安全に⛑️
